工場における省エネルギー(省エネ)対策は、コスト削減だけでなく、環境への負荷軽減という重要な役割を果たします。今回は、実際の工場で効果が確認された省エネ改善事例をご紹介します。これらの取り組みは、いずれも初期投資に見合った高い効果が得られるもので、どのような規模の工場でも応用可能です。
また、こういった対策のための企業負担を減らすため現在政府から出されている補助金もご紹介いたします。
1. コンプレッサーのエア漏れ対策
工場内の圧縮空気は多くの機械や装置の稼働に必要ですが、その供給には大量の電力が使用されています。調査によれば、全体の20%近くがエア漏れによって無駄になっている可能性があります。配管や継手、ホースの接続部からの漏れを特定し修繕するだけで、コンプレッサーの稼働時間を短縮でき、電力消費を削減できます。
また、エア漏れ検知には石鹸水を用いる簡易的な方法から、超音波リークディテクターを使った高精度な検査方法まで幅広い選択肢があります。
2. ボイラーの熱効率向上
ボイラーの燃焼効率を最適化することも省エネにつながります。燃焼空気と燃料の混合比(空気比)を適切に調整し、排熱を回収して再利用することが効果的です。たとえば、排ガスからの熱を回収して給水を予熱する方法では、ボイラー効率が約10%向上することが期待されます。これにより、燃料使用量を削減できるだけでなく、CO2排出量の低減も可能です。
3. 照明のLED化
工場内の照明を蛍光灯や水銀灯からLEDに置き換えることで、大幅な電力削減が可能です。LEDは従来の照明と比べて消費電力が約半分以下で済むうえ、寿命も長く、メンテナンス頻度を減らせるメリットがあります。さらに、人感センサーを導入することで、人がいない場所の無駄な点灯を防ぎ、さらなる省エネが期待できます。
4. 空調設備の効率化
空調設備の消費電力も工場のエネルギーコストに大きな影響を与えます。冷暖房の設定温度を1℃変更するだけで、消費電力を約10%削減できると言われています。また、長時間人がいないエリアでは空調を停止し、稼働時間を管理することが重要です。
さらに、インバーター制御を導入した空調設備は、省エネ効果が高く、稼働状況に応じて効率的な運転が可能です。
5. ビニールカーテンの設置
ビニールカーテンは、冷却や空調の効率を向上させる簡単かつ効果的な方法です。冷蔵倉庫や冷凍倉庫で一般的に使用されていますが、工場内でも仕切りを設けることで、エアコンの効率を向上させることができます。ビニールカーテンの設置は比較的低コストで、即効性があるため、多くの工場で採用されています。
6. 再生可能エネルギーの導入
太陽光発電や地熱発電などの再生可能エネルギーを導入することで、工場全体の消費電力を削減することが可能です。また、余剰電力を売電することで追加の収益も得られます。補助金や税制優遇を活用すれば、初期投資を抑えることができ、導入へのハードルが下がります。
現在、日本国内では再生可能エネルギーの導入を促進するため、自治体や政府がさまざまな補助金制度を提供しています。たとえば、「再エネ促進事業」では、太陽光パネル設置に対して最大で導入費用の30%の補助金が支給されることがあります。
7. 老朽化した設備の更新
設備の老朽化は、無駄なエネルギー消費の原因となります。最新の高効率機器に更新することで、大幅な省エネ効果が得られます。特に、大型モーターやコンプレッサーなどの更新は、初期費用は高いものの、ランニングコストの削減効果が非常に大きいため、早期に導入を検討する価値があります。
8. 屋根や外壁の断熱・遮熱対策
工場建屋の断熱性能を向上させることで、空調負荷を減らすことができます。たとえば、断熱材を追加したり、屋根に遮熱塗料を塗布することで、夏季の冷房負荷を大幅に低減できます。
遮熱塗料は、太陽光を反射して建物内部への熱流入を防ぐ効果があります。この技術は、日本の多くの工場や倉庫で採用され、冷房エネルギーの節約に貢献しています。
9. 蓄電池の活用
太陽光発電システムと組み合わせて蓄電池を導入することで、昼間に発電した電力を夜間に使用できます。また、需要のピーク時間帯に蓄電池からの電力供給を行うことで、契約電力を削減し、基本料金を抑えることも可能です。
10. エネルギー管理システムの導入
エネルギー使用状況を「見える化」することは、無駄を特定し効果的な対策を講じるための第一歩です。エネルギー管理システム(EMS)を導入すれば、電力使用量や設備の稼働状況をリアルタイムで監視できるため、問題箇所を迅速に改善できます。
現在、多くの企業がEMSを活用してデータ分析を行い、省エネ対策を効果的に実施しています。たとえば、一定期間のエネルギー使用量を比較することで、特定の設備の無駄を発見し、運用の改善につなげることができます。
省エネ対策に関連した補助金
省エネ対策による企業の負担を減らすため、エネルギー省が補助金や相談窓口を用意しています。情報が随時変わるため、定期的に確認をしておきたいです。
1. 省エネルギー投資促進に向けた支援補助金
経済産業省は、省エネルギー設備への更新を支援するための補助金制度を提供しています。この制度では、機械設計が伴う設備や事業者の使用目的に合わせて設計・製造する設備、先進型設備等の導入を支援しています。また、化石燃料から電気への転換や、より低炭素な燃料への転換等、電化や脱炭素目的の燃料転換を伴う設備等の導入の支援も行っています。詳細は資源エネルギー庁の省エネポータルサイトで確認できます。
2. 省エネ再エネ高度化投資促進税制
省エネルギー関連設備の導入に対して、税制上の優遇措置が適用される場合があります。具体的には、計画認定制度に基づき、大きな脱炭素化効果を持つ製品の生産設備や、生産工程等の脱炭素化と付加価値向上を両立する設備の導入に対して、最大10%の税額控除または50%の特別償却が措置されます。詳細は資源エネルギー庁の資料で確認できます。
3. 中小企業等エネルギー利用最適化推進事業費
中小企業向けに、省エネルギー診断や省エネ相談地域プラットフォームの構築など、きめ細かな支援を行う制度があります。省エネの専門家が工場や事務所を訪問し、エネルギーの無駄遣いや省エネに繋がるヒントを提供します。詳細は省エネポータルサイトで確認できます。
これらの制度を活用することで、工場の省エネ対策に伴う初期投資の負担を軽減し、効率的なエネルギー使用を推進することが可能です。最新の情報や具体的な申請手続きについては、各制度の公式ウェブサイトや関連機関に直接お問い合わせください。
まとめ
工場で取り組める省エネ対策と、現在政府から出されている補助金についてをまとめました。
経費節減だけでなく、2050年のカーボンニュートラルに向けて、今後より省エネ・脱炭素経営の重要性は高まっていきます。企業にとって省エネ対策はますます重要なものになることは間違いないと思われます。できるとこからすぐ行っていきましょう。