工場内部の温度管理は非常に重要です。重要な理由は次の点が挙げられます。
- 生産管理の上で必要
- 労働安全衛生管理の点で必要
さて、工場内の温度の維持には遮熱シートの使用が効果的です。遮熱シートを利用すれば、エアコンの使用量を抑えられます。その結果としてエネルギーのコストダウンが可能なのです。
しかし、遮熱シートは闇雲に使うべきではありません。使い方を誤ると、十分な効果が得られないでしょう。
そこで、ここでは遮熱シートの概要やメリット、効果的な使用法などを紹介します。
遮熱シートとは
まずは遮熱シートについて、次の点について解説します。
- 遮熱シートの仕組み
- どんな効果があるか
- 遮熱シートの使い方
遮熱シートの仕組み
遮熱シートは「輻射熱」の反射によって熱の伝わりを防ぎます。
熱は太陽で作られ、宇宙を伝わって地表に届く電磁波です。この熱の伝搬を輻射熱と呼びます。
遮熱シートはアルミ箔を材料としたシート材です。シートのアルミ箔が熱の元の電磁波を反射します。その結果、輻射熱の伝わりを防ぐのです。
どんな効果があるか
遮熱シートは輻射熱を反射するシートです。太陽からの輻射熱を反射すると共に、室内からの輻射熱も反射します。
つまり、次の効果が望めます。
- 屋外からの日射による室内の気温上昇を抑制する
- 室内から屋外への熱の伝わりを抑えて室内の気温を維持する
この結果、夏場であっても室内の暑さは抑えられます。また、冬場の寒さも緩和できるのです。
遮熱シートの使い方
遮熱シートは一般に壁や屋根などに貼って使用します。
壁や屋根に貼って、これらの部分の熱移動を防ぐのです。
基本的には全面に貼ると効果が上がります。全面に貼らない場合は貼っていない部分で熱の移動が起こるからです。その場合は確かに断熱が可能でしょうが、十分な効果は得られないでしょう。
遮熱シートと断熱シートの違い
次に、遮熱シートと断熱シートの違いを遮熱と断熱の違いを併せて解説します。
遮熱シートと断熱シートの違い
前述のように、遮熱シートは薄いアルミ箔で作るシート材です。しかし、断熱シートは2枚のアルミ箔の間に空気層を設けた素材です。
遮熱シートは輻射熱を反射しますが、断熱シートは熱全体の移動を防ぎます。
これは、断熱シートの内部に仕込まれた空気の部分の効果です。空気の部分が熱の伝導を抑えて、熱の移動を抑えるのです。
遮熱と断熱はどう違うか
熱の伝わり方には「伝導」「対流」「放射(輻射)」の3種類があります。この内、固体を伝わるのが伝導、空間を伝わるのが放射(輻射)です。
さて、遮熱シートは輻射熱(熱の放射)をアルミシートで反射します。しかし、伝導する熱は防げません。
その点、断熱シートは中間の発泡層で熱の伝導も防ぎます。また、表面のアルミ箔で輻射熱も反射します。その結果、熱伝導も輻射熱も伝わりを防止して断熱効果を発揮するのです。
遮熱シートを使用するメリット
遮熱シートを使用するメリットは次の4点です。
- 暑さや寒さを防ぐ
- 光熱費の削減
- 生産環境の維持
- 在庫製品の品質維持
それぞれについて解説しましょう。
暑さや寒さを防ぐ
前述のように、遮熱シートには日射による室内の気温上昇を抑えます。また、屋外への熱移動を抑制する効果もあります。
この効果により、夏場の暑さや冬場の寒さを防げるのです。
例えば、鉄鋼などを扱う工場では夏場の気温は上がりがちです。その気温上昇をエアコンなどで補うにしても、やはり限界はあります。
しかし、遮熱シートを使えば気温上昇が抑えられ、暑さの緩和ができるのです。
夏場の暑さ対策は労働安全衛生の観点からも重要です。
光熱費の削減
気温の維持のためには光熱費が発生します。光熱費は気温を変えれば変えるほどに高額です。気温を10℃から20℃まで変える場合と、15℃から20℃まで変える場合では違うのです。
建物に遮熱シートが貼られていれば、外気温の変化をあまり受けません。
イメージ的には外気が8℃であっても10℃まで下がらず、15℃程度で抑えられます。
その結果、冷暖房で変える気温が小さくて済むので、光熱費が抑えられます。
工場のように大きな建物であれば、この効果は非常に大きいと思われます。広い建物の気温を変える場合は光熱費がそれだけ高いからです。
生産環境の維持
生産する製品によっては、生産環境の気温を厳密に管理しなければいけません。例えば、大きな樹脂製品は気温によって収縮します。そのため、生産現場の温度管理はシビアです。仮に管理が出来ない場合には寸法誤差が生じるからです。
ところで、生産現場の気温を維持するためにもエアコンが必要です。しかし、気温の維持をエアコンのみで行うことは効率的ではありません。それだけ、エアコンの稼働量が多いからです。
しかし、現場の遮熱が出来ていれば、そこまでエアコンを使わなくて済みます。気温の維持も効率的になるのです。
在庫製品の品質維持
工場の多くは倉庫を併設しています。また、倉庫によっては温度管理が厳重の場合もあります。これは、在庫製品の品質維持のためです。
例えば、食品工場などの場合は保管の温度条件はシビアでなければいけません。仮に、温度管理が出来ていなかったならば、製品の品質が保てないでしょう。
さて、このような場合、倉庫に遮熱ができていれば気温維持の効率が上がります。外気温が変化をしたとしても、室内への影響が少ないからです。
その結果として、在庫製品の品質維持が効率的になるのです。
遮熱シートの効果的な使用方法
遮熱シートの効果的な使用方法は次の通りです。
- 窓に貼る
- 床に貼る
- 壁に貼る
- 屋根部分に貼る
- 断熱材と組み合わせる
それぞれについて解説しましょう。
窓に貼る
窓は輻射熱の出入りの激しい部分です。例えば、晴れた日の窓際は気温が上がります。
これは、輻射熱を窓ガラスが通すからです。窓に遮熱シートを貼ると、窓が輻射熱を反射するようになります。その結果として、窓部分の熱の移動が抑えられます。
窓ガラスの隅々まで貼るのが基本です。隙間を残した場合には、その部分から熱が漏れ、遮熱の効果が落ちるからです。
床に貼る
床も熱の出入りがあります。床からは熱は伝導と放射によって逃げるのです。
例えば、床の上にヒーターを置くと、ヒーターからは熱が放射され、その熱で床面が温まります。そして、その輻射熱によって床から下にまで伝導で逃げるのです。
しかし、床に遮熱シートを貼れば、ヒーターから放射された熱で反射されます。その結果、床から熱が逃げずに済み、気温の維持が効率的になるのです。
壁に貼る
壁に貼っても温度の維持には有効です。
これも、床の場合と同様です。ヒーターからの熱が壁の表面で反射されるので、壁から熱が逃げずに済みます。
壁には断熱材が入っている場合が多いですが、断熱材は完全ではありません。
熱の移動を抑えるためには、遮熱シートとの組み合わせが、より効果的なのです。
屋根部分に貼る
屋根は日射をダイレクトに受ける部分です。遮熱シートを貼れば大きな効果を得られます。夏場の厳しい暑さから屋内を守ることでしょう。
工場の場合には折板屋根が見られますが、施工には技術が必要です。専門家に相談しましょう。
断熱材と組み合わせる
遮熱シートと断熱材を組み合わせると一層効果的です。熱の伝導と輻射を抑えられえるので、非常に効果的なのです。
例えば、床に遮熱シートを敷いた場合には、シートで輻射熱の反射は可能です。しかし、ヒーターで温まった物から床への熱伝導は防げません。
その点、断熱材と組み合わせてあれば、伝導での熱の逃げを抑えられるのです。
まとめ
遮熱シートについて取り上げました。熱の伝わり方と併せて遮熱シートについて理解できたことでしょう。また、自社工場への施工を考えた経営者もいるのではないでしょうか。
ともかくとして、屋内の温度環境の維持に遮熱シートは非常に有効です。そして、生産現場にも良い影響をもたらします。企業の業績にも影響し得るので、ぜひとも遮熱シートの設置を推奨します。